私の中の眠れるワタシ
ZEN
嶺は、一時間も待たされたというのに私の姿を見つけると笑顔だった。
「レイ、ごめんね。最後にカップルがきて。
だいぶ迷ったあげく、また来る事になっちゃって。結局売りのがしちゃったぁ」
今日の私は、フレグランスを仕事の時とつけかえていなかった。
私の二十五歳の誕生日に、
「香水なんて、そんな安いものが欲しいの?」
と驚く彼に、
「レイの知ってる私を教えてもらいたいから、おねがい。」
と優しく抱きついた。
彼とは、付き合ってまだ三ヶ月だったけど、私は心から愛していた。
誕生日までにお金を貯めているんだと聞いた時、すぐに
「フレグランスが欲しいから貯めなくても大丈夫かもよ?」
と笑い、彼はそのとおりにしてくれたようだ。
「じゃあ、約束のこれ。気に入らなかったらごめんね。」
そう言って、鞄から大切に取り出す箱に胸がワクワクしはじめる。