私の中の眠れるワタシ

休みにはよく、レイと森へ行った。

街でデートした事しかないから、自然の香りはこんなに強く、脳まで染み込んでくるなんて知らなかった。

草は、そよぐたびに色を変えたし、木が葉を落とす事は、死んでいくのではなく……

『生き続けていくために必要だったのだ』と。


昔、枯れ葉のように散ったワタシなのに、今生きているという事が、なによりもの証。


愛という言葉が、恋人同士だけのものではない意味がわかる。

私は、足元にいやというほど落ちているドングリを拾って実家の庭に埋めると言った。

レイは笑って、

「大きくなったら、ここに帰そうねぇ」

と言い、一緒に拾ってくれた。

ドングリが、庭で成長し。
そして、また、いつか。

二人で森に帰す日が来る、ということ。

『育て、育む。』
この地味にも思える長い年月を必要とする作業。

−−レイとなら、永遠過ごしたい。



そしてそれは、私の宝物になるはずだった。




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