私の中の眠れるワタシ
子孫
仕事は、順調だった。
フレグランスブームとでもいうのか。
毎日、大勢の客が訪れ、新しい自分を探して新しい香りを買い求めた。
現代人は皆、くたびれていて癒しを求めていた。
小さな贅沢として、香りを利用する人は多い。
私の勤める店でも、インターネットで通信販売を始める事になった。
私は機械に疎いので、専らフレグランス紹介の文面を考える仕事を受け持つ。
…GIVENCHY<EAU TORRIDE>じばんしい おーとりーど
避けては通れないが。
香り立つ文章を、ねらなければならない。
やはり、あのキャッチコピーは掲載する。
……彼女は氷。彼女は炎。
私は、氷の時も炎の時もあったかもしれないけど。
今の私は、紛れも無くそのどちらでもない。
−−私は、私。