私の中の眠れるワタシ

私のほんの出来心は、彼と私の間に小さな小さな、ヒビをいれた。

直せるくらいの小さなヒビだと思いたい。

だけど、彼はそのヒビを事あるごとに触りだす。


「蜜、それもまた、嘘じゃないの?」

……私の栄転。本部に異動の通告が出た。

転勤になる。私はこの街を去るつもりだ。


「嘘じゃ……、ないよ。私、行く。」

彼は止めてくれなかった。彼が止めなければ、私は行くしかなかった。


−−『オワカレ』


私は彼と、遠く離れた地で繋がり続ける事は、できないんだろう。


「教えて。どうして赤ちゃん、欲しくなかったの?」



彼は、ずっと今のままがよかったからと答えた。

……ずっと、コノママ。


それは私も願っていた事だったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。

二人の『コノママ』に、いつからズレが生まれたんだ。


「赤ちゃんがいる生活より、二人で遠くに好きな時旅行したり、おいしいもの食べたり、大きな犬を飼ったり、素敵な家に住んだり……」


そういう生活が、したかったんだと呟いた。

彼の望む生活。

私だって、欲しくないわけじゃなかったよ。

−−だけど、赤ちゃんもほしいな。

それは、欲張リだったのカナ。



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