私の中の眠れるワタシ
テレビはもう、消したのに。
黒いブラウン管に映る、私とレイが何度も繰り返した『普通の一日』があった。
私も彼も、お酒はあまり飲まなかったけど。
よく、ジュースで乾杯した。
仕事の話、
友達の話、
次はどこに遊びに行くかの話、
思い出話、
愚痴、
ケンカ……
たしかに子供は映らなかったけど、CMの彼らは楽しそうで。
−−私達も楽しかった。
「こんな夫婦になりたいなぁ〜」
夜にたまたま目にしたとき、レイに言ってみた事がある。
彼は、
「なれるよ。もう、なってる!」
と言い、私は、
「まだだよ、年季が足りない!」
と、答えた。
あれから、まだそんなに経っていないけど、完全に二人の日常だったものは『テレビの中の事』になってしまって。
私はぼんやり、
−−『ケッコン』かぁ、簡単なようで、難しいなぁ。
そんな事を考えながら、声もださずに泣いた。
クッションに、顔を埋めて、息が止まるくらい、泣いた。