私の中の眠れるワタシ
あの日、これを選んだ彼は、いつかワタシに何気なくあげようとしてたかも、しれない。
その証拠に、今まで二年間も保存していたのだから。
彼はフレグランスに詳しい人だったから、あの日は香りも試さずに買った。
……香りに詳しい事がわかるのは、お店が終わり、お茶をしていた時だったけど。
迷いなくこれを選んだところから、適当に買ったんだと思っていた。
あれから約二年経ち、ワタシ達は別れて、この街にくるときになり、これをもらう事になる。
蜜との思い出の最後だと言ったが。
捨ててくれてもよかったのに。
彼はわざわざフレグランスの事を思い出し、そしてワタシに託した。
−−これを持っていることが、レイも辛いように、ワタシだって辛いけど。
彼は全て振り切りたいあまり、ワタシに託した。
だからワタシは、彼からもらった、最後の手紙のように、一生懸命メッセージを汲み取ろうとしていた。