私の中の眠れるワタシ

隣のテーブルに、一際目立つ男性がいた。

とにかく、身長が高くて、その一番てっぺんに、私の大好きな芸能人にソックリな顔が乗っかっていた。

私は、また自分からキャバレーの香りを通してその男性に、『寂しがり屋な事、恋がしたい事』が感じとられてはいまいかと、びくびくする。


……もっとも、アロマテラピーの講習にフレグランスはつけて行かないのだけど。

私の持ち物にはどれもすでに、人恋しさを香りにしたようなあの匂いが染み付いていたから。



いつも通り研修を終えて、私は会社に顔を出して帰るために急いで荷物をまとめていた。

……隣のあのヒトも、帰り支度をしている。



私は、そんな事を意識する自分に飢えを感じた気がして、雑念を拭い去るようにコートを着た。

外はもう、寒い。
冬の香りがした。

キャバレーは、冬に似合う香りだと、私は勝手に思っている。



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