私の中の眠れるワタシ

「ねえ、アキ。私やっぱり戻ろうかと思うの。」

彼はがっかりして私を見た。
その彼の、ダルダルになったシャツの襟元を見て続けた。

「あのね、だって……アキには夢があったじゃない!?独立開業の。だから、資金的にも、応援したいし。少しずつでもね」

ああ、あの夢……と、彼は言葉を被せて吐き捨てた。

「蜜、圭太郎もいるんだし、三十までには無理だと思うし。もう諦めたからいいんだ。」




−−−ショックだった。


応援していたし、今の苦しい生活の中で見られる、唯一の夢だった。

私も楽しみにしてたのに。


「それにね、蜜。やっぱり早めに二人目を考えて、圭太郎に兄弟を作ってあげたいよ。」


そんなこと、無理だ。

今の経済状況は、私のやりくりでなんとかなってきたのに。


「あのさ、アキ……。もう家計も限界なんだよ…?一人で精一杯。それに、退職しないで産休にしたのは、二人で相談した上の事でしょう?」

私が、強い口調で、まるで叱るように彼に言った時。


彼はもう、言葉を返さなかった。



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