私の中の眠れるワタシ

久しぶりに会社に出て、ここがこんなにもフレグランスの香りがすることに初めて気付く。

いつも圭太郎を抱いていたから、フレグランスはつけなかった。

つけたらダメなわけではなかったけど……。

お風呂あがりの石鹸の匂いや、圭太郎のミルクの匂い、洗濯物の柔軟剤の匂いが心地よかったし、幸せを感じたから。


新作のフレグランスについて、改めて勉強しなおした。

会社の同期や部下だった人にまでも、置いて行かれたような抜かされたような焦りを感じた。

だからより一層、仕事に集中した。


家に帰ると、アキがすでに圭太郎を託児所に迎えに行って帰って来ている。

「おかえり、蜜〜!」

私はくたびれた体と脳が、彼に癒されるのを感じた。


「今日はね、圭太郎がハイハイらしきものを始めてね!まだ、なんかゴロゴロ転がる感じだったけど……ねー!アハハ!!
ミルクも飲んだし、離乳食もいっぱい食べたし……」

彼はいつか私が彼にしたように、圭太郎に語りかけるようにしながら、今日の出来事を話してくれた。




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