私の中の眠れるワタシ

本気




−−朝。

そっと玄関のドアを開けた。

いつかのあの時みたいに、静かに入ったのに、気配に気付いて彼は起きてきた。


「嘘だろ。……朝だぞ……」

アキはまだ眠たそうな目をこすりながら時計を見た。

ワタシも、嘘デショ、って、思っている。


「ごめんね。高校の時の友達と飲んでて。地下鉄乗り遅れちゃって……しかたないからカラオケに行って……」

これは、一体なんのための嘘なのか。

私には、わからなかった。

「ごめん、私もう仕事行かなくちゃ。今日また新人が入ってきて研修なんだ。」


彼はいろいろ言っていたが、聞こえなかった。


−−ハヤク、ニゲタイ。


その一心だった。




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