私の中の眠れるワタシ
「ワタシとここに来るという事、あなたになんの得があったの?
こんな危険を侵してまで、何がしたかったの?」
ワタシには、彼が、不思議でならなかった。
どこかで、誰かに見られたら。
きっと彼の方が悪者扱いされてしまうだろうコトは、他人の不倫をみてわかる。
「得、か……。
損得じゃ、ないよね。こういうコトってさ。」
彼は、ワタシを傷つけないように……
だけど損得という言葉を選んだワタシを憐れむような目をしながら、
「俺はね、シンノさんを、助けてあげたかった。救ってあげたかったんだ。
いつも遠くから、そう思ってた。
会社でも強気で、男と同じくらい頑張ってて……
だから、自由にしてあげたかった。
家庭のしがらみとか、なんかめんどくさいもの、全部から。心を。
……なんてね。
シンノさんこそ、困るでしょ。」
−−なんにも困らないわ、これは浮気でも、不倫にもならないもの……。
そう、
本気なのね、
ワタシ達。
二人だけにしかわからないタイミングで、確認しあった。
−−タスケテ、アゲル。
この言葉こそ。
ワタシを変える、最後のカギ。
それを、彼は。
あっけなくワタシの目の前でぶらつかせ、記憶の奥のカギ穴に、サシコンダ。