私の中の眠れるワタシ

二人目の、結芽




彼とは二人で、する事ががなくなるとよく、カラオケに行った。

二人きりで、好きな歌を好きなだけ歌った。


彼は、片思いの歌や、どうにもならない横恋慕の歌ばかり歌うから、ワタシは笑った。

いつもオモイッキリ不倫の歌ばかり。

少なくとも、彼の声帯を通して聞こえてくる歌は、みんなそんなふうに感じた。

「その歌、お似合いだね。」

ワタシ達は、もう片思いでも横恋慕でもなかったけど、彼にはずっとその雰囲気があった。

ワタシが何人もいて、その一人ひとり全てを探しては、順番に愛していこうとするような。


私には、知られたくないワタシもいたから。

探してほしくなかった。

今、目の前の私だけをみていてくれればよかった。

一日、一日のワタシを愛してくれるだけで、よかった。


欠勤が続き、ついには。

仕事を辞めてしまったワタシの事は、忘れてほしい。



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