私の中の眠れるワタシ
解説・・・長崎 真也
僕が、この自伝を姉の持ち物だった中から見つけたのは、冬のよく晴れた、寒い日でした。
姉はある日、行方がわからなくなり、家族皆で探しましたが、次に会えたのは、すでに亡くなった後でした。
驚いたのは、姉の苗字が変わっていた事です。
長崎 蜜だとばかり思って、病院で探して歩くと、どこにもみあたらず、しかし、蜜という珍しい名前から思い当たる方がいらっしゃいますと。
姉は、『真野 蜜』になっていた上、一緒に隣で横たわっていたのは、アキ兄さんと、甥の圭太郎でした。
彼らは、皆でドライブに出て、対向車線から入ってきた車をよけきれず、このような事故になったそうです。
翌日の新聞で、載ったのをみたら、みんな苗字は【真野】になってました。
でも、姉は幸せだったと思います。
だって、一つの苗字で三人並ぶのが、もう一度見たかったわけですから。
そして僕は、姉の残した荷物を、全部整理させてほしいと申し出ました。
なぜなら昔、姉の手紙をこっそり読んで、返さなかったし、約束を破ったからです。