私の中の眠れるワタシ
自習ノート
相田先生は、私が二年生になるとき赴任してきた。
−−−四月。
皆の好奇の目が向けられる、始業式の檀上。
校長の話の間、その後ろで待つ新しい先生達を、じっくり品定めする。
……あの先生は、優しそうだ。
……あの先生は、新しい生活指導担当らしい。
小声で、様々な憶測や噂が飛び交う。
私が気にかけているのは、ただ一つ。
部活の存続についてだ。
去年まで受け持ってくれていた、体育の先生は三月に転任した。
テニスを知ってる先生なら、誰でもいい。
祈るような思いで、先生方の自己紹介を聞く。
その時、相田先生がマイクの前に立ち、
「はじめまして!」
と快活に名乗った。
他の先生より、声が大きくて、ハウリングしている。
生徒から、クスクスと笑い声が漏れる。
「僕は学生時代、ずっと軟式テニスをしていまして、大学生の時には全道で優勝しました。
というわけで!!
この度、テニス部を担当させてもらう事になりましたので、皆を強くしたいと思ってます。
教科は、英語です。一年間アメリカに留学していました。
教師になったばかりで、まだまだわからないことだらけですが、一緒に頑張りましょう。
……趣味は、カラオケです。よろしくお願いします!」
皆から、歓迎の拍手が起こる。
−−私はア然とする。
あの、若い先生が、新しいコーチになるのか?
皆がスーツやジャケットを着用している中、体育の教師とともに、ジャージ姿で緊張している、あの先生が?
一際目立つ、真っ白なジャージを着ていた。
前列の男子に、
「パーンツ、透けてるっ!!」
と冷やかされて、頭をかいて笑っていた。