私の中の眠れるワタシ

……さっき、一瞬感じた空気は何だったのか。

先生が教室を出た後、すぐにもう

「てか、まじウゼーんだけど、あいつ。死んでくんないか。」

と一人が言い出したら、

「大人なのに、泣いてばかみたい」

「興奮しすぎー!」

と、皆のテンションは上がっていく。


−−わかってる。

ホントは皆、先生の本気に触れて、ドギマギしたんだ。

すまない、とも思ったけど、あくまで悪気はないと、通したい。

だって、皆で『イイ人』を傷つけたなんて罪悪感が残るから。




しかし、噂はすぐに広がった。

隣にも、そのまた隣のクラスにも、イジメは連鎖する。


教卓一面に画鋲を敷き詰めたり、チョークが全て小さくなってたり、クラスのほぼ全員でサボったり。

大小問わず、イタズラが繰り返された。


声を荒げて怒る先生は、もういなかった。

静かに片付け、淡々と授業をした。

心なしか、プリントを配布して解かせる時間が増えた。

誰かの発音を直すことも、もうない。

ノートについても、もう触れない。

でも私は根気よく提出していた。
……同情も、ある。
自分の事情も、あるけど。



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