私の中の眠れるワタシ
この事実に気付いた奴がいた。始めに自習ノートに異議を唱えた徳井だ。
「先生、自習ノートやってる奴にだけ、テストのヤマを教えてるだろ。」
ある日のテスト返却日、そういって椅子を斜めに傾けながら徳井がふんぞり返って言った。
その疑問は、クラスの中でフワフワと漂っていたものだった。
徳井が、はっきりと口にした事で、皆の思いが形になり、疑いの目が先生に集中する。
「そんなわけ、ないだろう。」
静かにそう言った。
「ひがむなよ、頑張った奴に失礼だ。それがおまえの実力だろ。」
徳井にだけ向けられた言葉だったはずが、一気にクラスを巻き込み、成績の伸びていない生徒を憎しみの表情に変化させ始めていく。
私は今までクラス内のやりとりをずっと見て来た。一度も口は挟まずに。
あえて言うなら、先生の怒りがあらわにされたあの日、教室のドアから覗き、何も言わずに立ち去った、学年主任の田中先生のような心境で成り行きを見守ってきた。
−−が、しかし。
今日は違ってしまった。