私の中の眠れるワタシ
自習ノートの提出は止めたが、自分の日記は英語で書いていた。
弟にも、母にも、読まれてもわからない。
なおかつ、勉強とごまかす事も容易だ。
loveとか、誤解を招く単語は避けていた。
そうすると、曖昧な胸のうちを表現するためには、複雑な言い回しも必要だった。
多分、文法も間違っているだろうな。でも構わない。大人になってから、赤ペンで自分で直せばいい。
寒さで、練習も段々厳しくなってきた。
体育館練習も始まるようだ。テニス部は、相田先生に変わってから実績を上げた。その成果で、体育館の割り当ては多く、部長としても鼻が高かった。
その頃、私は休み時間、以前からなんとなく話し掛けにくかった、いつも窓の外ばかり見ている女子が気になっていた。
いつも制服のスカートのヒダが綺麗なプリーツをつくり、振り返るたびに、亜麻色の髪が、甘い香りをふりまく。
頬にかかる髪を耳にかける仕草に、同性なのにドキッとする。
それはその耳の下、首筋にあるホクロのせいかもしれないけど。
「ねえ。何見てるの。」
「……ああ、長崎さん。何か用?」