私の中の眠れるワタシ

いよいよだ、と張り切ってみたものの。

刃を手首に滑らせてすぐに効果がない事に気付く。

どうしても浅い、猫の引っかき傷か、紙で切ったような後しか残らない。



……これでは、何時間かけても駄目だろう。




ワタシは湯舟からあがると、今度はとても冷静な自分に気付く。

食器棚には、グラスがある。

友達の結婚式の引き出物だったグラス。
一組だったのに片方は前の家で割れた。
だから、対のいない、一人ぼっちのグラスだった。

それに、分厚いマグカップの底をたたき付けて、大きなカケラになるように、割った。


鋭い物が、いくつかできる。


今度は大丈夫。グラスのカケラ全て浴槽に持ち込んだ。




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