私の中の眠れるワタシ
はじめは、まさかと疑った。娘の友達が来ているというのに……。そんな、まさか。
胸が、ドキドキする。
こんなの、テレビでしか、聞いた事がない。
声を殺しているのは、伝わる。でも、まだ日の高いこの時間に、聞こえてくるような種類の音ではない。少なくとも、私の常識では。
美月の声だけに意識を集中しようと、美月を見た。
美月は、学校では見たこともないような、真剣な表情を浮かべていた。
美月にも、その声が聞こえていないわけは、ない。
むしろ、私にあれこれと話しかけてくれているのは、私に聞かせまいとする思いやりであり、彼女自身は、聞きたくてたまらないような、心ここにあらずの顔だった。
私は限界を感じて、話を遮った。
「ねえ。帰りたい。だめ?」
美月はピタっと会話を止めると、
「そう。構わないわよ。」
と、あっさり言って、あなたの聞きたかった事の答えを知らなくてごめんなさいねと言いながら、私を『開放』してくれた。
私が訪ねたのに、開放してもらうというのも変だが。
本当に彼女は正直だ。学校で言ったとおり、私にはまだ早い事という忠告を無視したための拷問のような感覚にとらわれていたから、開放されたというのは、大袈裟ではない気がした。