私の中の眠れるワタシ
……あれから。
彼女とは、学校で話す事はなかった。
美月は、居心地が良い。そう感じたのは、『幻』だったのか。
今なら、違うと言える。
でもあの当時の私には、もう彼女と関わる理由の全てが、ないと思いたかった。
私以外の人の苦しみから、避けて『逃げたい』。巻き込まれたくない。気持ちを、わかりたくない。
本気でそう、思った。
−−彼女。
美月と私は、日々の生きる境遇と学校での振る舞い方は違ったけど、私が生まれてから初めて会えた、『親友』だった。
あんなに心が病み、それに自分自身では気付けず、それでも私に何かを伝えてくれようとした。
私が自分から打ち明けなくても、恋の気配に気付き、自分の経験を通して、ヒントをくれた。
−−与えるだけじゃなくて、何かを受けとる事−−
彼女の家を訪ねたあの日、与えられても受け取れなかったメッセージ。
彼女は、たしかにそう言っていた。
でも、その言葉の本当の意味に気付くのは、まだまだ遠い、先になる。
気付くまでには、まだ、私には傷が足りなかった。
−−身体の、ではなく。
心とぴたり寄り添った、『肉体の傷』が。