私の中の眠れるワタシ

次は手応えがあった。

始めは肌が軋むような。

しかし、しっかりと肌に食い込んでからは、熱くヒリヒリするような感触が、左腕だけと言わず両手に感じられた。

時々、驚くようなズキッとする痛みもある。

でもそれと引き換えに、腕もキラキラ光る。



−−『ワタシ』の血液は、『私』のものでもある。



だから、右手は止まらないのに、不意に私は、

『死んでしまったらどうしよう』

と思ったりする。

まだ会いたい人もいるし、こんな親不孝してはいけないよ。

それを受けてワタシは、

『大丈夫、少し眠るだけ。少し意識を無くしたいだけだから、死んじゃう前に颯生が来てくれる。
だから迷わないで集中して。大丈夫……』

と言い聞かす。

この繰り返しにより、だんだんと右手は一定のリズムで、時と手首を刻んだ。


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