私の中の眠れるワタシ
無理に快活に振る舞うたび、その様子は痛々しく同学年の子達の目にうつるのか、
「蜜、疲れているんだよ……。私達にも、もう少し頼っていいんだよ?」
私と同じ時に、副部長に指名されていたサナミが、そっと背中を撫でてくれた。
「うん、ありがとう。なんだか最近、変だよね。弟が横でいろいろ言うから、気が散ってさ……。
兄弟って、嫌だよねー!」
サナミは私の言葉に、うんうんと頷き、
「うちもそうだよ!妹だけど、私とはタイプ違ってインテリなの。いつも私の事、バカ、バカって言ってばっかり!……あ、シャレじゃないよ?!」
私は、少し明るい気持ちになる。
サナミはダブルスでのペアであり、たった一人だけ私の事を『蜜』と名前で呼ぶ子だった。
−−ミツって読むの?変わってるね!
たしか、そんなふうに話しかけてきてくれてから、もうすぐ二年ちょっと。
あまり私の事を詮索したりおだてたり、変に親しくなろうとしてこない、最高に付き合いやすい子だった。
もうダブルスを組んで長いが……
ケンカも一度も、したことがない。彼女のお陰だ。
私は別の子とペアを組んでも、勝ちたい気持ちが強すぎるのか、一緒に大会に出た子を必ず泣かせてしまった。
そしてみんな、必ずこう言う。
「ナーガは悪くないの。私の練習不足で負けたの。ごめんなさい。」