私の中の眠れるワタシ
そんなある日。
サナミがいつもの部活の帰り、一緒に帰らないかと切り出してきた。
珍しい。
サナミも私もマイペースなので、練習が終わったらバラバラになり、さっさと帰るサナミといつまでもあくせく練習を続ける私とで、一緒に帰るということは、まずした事がなかった。
私はなんとなく、ただならぬ感じがして、
「……どうしたの?なにか相談?」
と、あまり深刻な顔はしないように、帰り支度をした。
「……うん。なんていうか。ちょっと聞きたい事があってさ。」
私達は、他の部員と一緒にならないように、道を選びながら歩きだした。
「で、何?恋の悩みとか?」
私は、交換日記をしてる子達に尋ねるように、軽く口火をきった。
「……ね、噂。聞いたことある?」
「え、なんの?」
サナミは、辺りをキョロキョロと小さく見回してから、小声で
「四組の、高田さんの。あっ、ほら、蜜、しばらく仲良かったでしょ?二年生の時、クラスも一緒でさ。」
あぁ。
高田 美月の事か。
私は、彼女の胸元に広がる赤いシミを思い出して、吐き気がした。
「それがどうかしたの?」
私は、自分を現実に呼び戻すように、笑いながら聞き返した。
「付き合ってるらしいよ。相田先生と。」