私の中の眠れるワタシ
−−どんな場所に身を置くかで、人は変われるものだと、今年の入学式で校長先生が話していたっけ。
飽きっぽくて一つの事をやり遂げた事がない者は、部活という世界に身を置く事で、自分を変えられる可能性がある。
勉強がニガテな者、人付合いがニガテな者も、得意な人やその他様々な個性を持ち寄る事で、小学校の時とはまた違う自分に出会えるって。
たしか、そんな内容だった気がする。
……そうかもしれない。
私は美月の母を見て、やっとあの話がわかった気がする。
校長も、こんな時に生徒が、しかも三年生が思い返しているなんて、思いもしなかっただろう。
どこで、誰とどのように過ごしているか。
これが、美月のお母さんを妖艶にしている秘密だろう。
うちの母も、いつもいないけど、全く違う。
年齢を差し引いても、程遠い。
異性の影は感じない。
母は、髪も細くツヤもなくなり、風呂もたまにしか入らず、歯も磨かないで家からいなくなるのだから。
私の頭の中で、裸のあの人が男性の身体にしなだれかかり、肌の色も声も、表情も、体温さえも自在に変えてしまう……
−−美月の母は、私の瞼の裏側で白い『カメレオン』になっていた。