私の中の眠れるワタシ
「待たせたわね。久しぶり。」
お風呂上がり、花のような匂いに包まれて美月が現れた。
久しぶりに向かい合って見る美月は、少しだけふくよかになり、でもそれは決して、醜くさせるようなものではなかった。
むしろ、女性らしい丸みが、ぐっと彼女を大人に変えたような、そんな感じだ。
「今から雅史さんが来るの。玄関では話せないから私の部屋まで上がって。」
言われるまま、靴を脱いで部屋に入った。
しばらくして、彼が来たようだ。
始めは会話をしていたようだったが、そのうちそれも途切れて、ため息に変わっていく気配を感じた。
その事に私はもう、驚かなかった。
それより私を怯えさせたのは、美月の言葉の方だった。
「最近、家を出ようかなって考えているのよ。
私がここにずっと居ても、母さんに悪いしね。」
私は、会話を続けられない。
今の美月と、対等に話せるような言葉を持ち合わせていなかった。
たかが相槌も、打てない。