君との期待値
言葉×誘惑
「亜姫ー」
昨日採った種を小さな袋に詰めていると聞き慣れた声に呼ばれた。
「赤羽くん遅い」
遅れて来るのはいつものことだけど、一応毎回注意はする。
けど、今日の彼は気持ち悪い。
私の前にきたと思ったら、変に楽しそうに笑っている。
「亜姫のために面白いの見つけて来たんだ」
面白いもの?
「ほらっ」
後ろから出した彼の手のひらに乗っていたのはコオロギ。
へー。
もうコオロギがいる時期なんだ。
「もう秋なんだね」
なんて、手のひらをまじまじと眺めながら言う。
私の反応が気に入らないのか赤羽くんは顔を歪ませた。
「……お前、かわいくないな」