ゆっくり愛して
「香保っ。ごめん、遅くなって。帰るか!」
「うんっ!」
差し出された手を握り返しあたし達は帰路を歩き出す。
放課後になった今でも先ほどの里美の言葉が頭から離れなくて、あたしの心臓はいつもに増して早く動いている気がする。
気持ちはあってもやっぱり…恥ずかしい。
こんな体見せて失望しちゃったら?もし引かれたら?
不安ばかりが頭をよぎるの。
あたしは里美みたいにスタイルだってよくないし、知識だってまったくないんだもの。
それに…
今こうしてただ手を繋いで歩いてる、それだけであたしは幸せなんだよ?
今もすっごくすっごく幸せ。
「香保?何かご機嫌じゃん?」
渉君があたしの顔を覗き込みながら問いかけてきた。
「だって一緒に帰れて嬉しいんだもんっ。」
普段はクラスも違うから学校では全然一緒にいれないんだ。
だからあたし達の時間は今この瞬間、帰り道だけ。
その時間を誰にも邪魔されず手を繋いでゆったり歩いてるのが本当に幸せだよ。
「何でそう…素直なのかなあ…」
ふうと息を漏らした渉君を見ると少し顔が赤い。
へ…!?
そんな渉君の表情につられて、なんだかあたしまで恥ずかしくなってしまった。
「ごめん…ね?」
変なこと言っちゃった…。
思い返せば少し恥ずかしくって…。
けど渉君といると心がぽかぽかして本当に心地良い。