ゆっくり愛して



「いや、謝ることねーよ。嬉しいし。」



くしゃっとはにかむ顔にあたしもまたまたつられて笑ってしまった。



渉君が嬉しいとあたしも嬉しいし


渉君が楽しいとあたしも楽しい



渉君が笑うとあたしも笑う。



だからきっと渉君が悲しいとあたしも悲しいし


渉君が泣くとあたしも泣いちゃうと思うな。





いつでも気持ちを共有できるこの関係、


あたしはそれだけで嬉しくて本当に幸せなんだ…







だからか、渉君と過ごす時間は本当にあっという間。



「気をつけてね。」



一人だと長く感じる帰路もこんなにすぐなの。

時間がいくらあっても足りないくらい。


いつも家まで送ってくれる渉君と離れる瞬間はとても寂しい。


離れがたくて仕方ないんだよ。




「…香保ちょっとしゃがんで?」


あたしから目を背けたまま、渉君はそう言った。



「え?どうして?」



あたしが不思議そうに聞き返せば



「いいからいいから。」


って照れたように笑いながらあたしをしゃがませる。


未だに状況を理解できないあたし。



すると渉君も一緒にしゃがんで…



何だろう?



そう思っているうちに…


ゆっくりと渉君の顔が近づいてきた。




え、キス…!?



そう気付いたときにはすでに唇が優しく触れていて、あたしもゆっくりと瞼を閉じた。







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