逢いたい時に貴方はいない
『ま、あれだな。
こんなふうに又呑めるなんて思ってもみなかったよ』


(それは私の台詞だ。)

「そう?」

『俺と呑みたかったんじゃねーのかぁ?』

少年のようにおどけて見せる彼。

彼は私が言いたい言葉をなんの躊躇もなく言った。

「…そんな訳ないじゃん、やだなぁ〜まったくぅ」

見透かされたくなくて…
また、嘘をつく。

本当は、逢いたくて
逢いたくて、
どうしようもなかったのに…

大人の女を気取ってしまう。

本当は、もっと素直になれたらいいのに……


(でも聞きたい事や
伝えたい事を話したら……きっと彼は嫌気がさすんだろうね)


そう思ったら、
また……
言葉を飲み込んでしまう。


あなたと別れた時に変わりたいと強く願ったのに……
逢わなかった間に、
変わったはずなのに!!

池田さんには
素直に喜怒哀楽が出せるのに、どうしても…
あなたの前では
何も変われない私がいる。


度胸がない自分を悔やんだ。



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