逢いたい時に貴方はいない
店も結婚話の前と変わらなくなり…いつもの買い出しのため外出の札を扉にかけると、

私は、いつものように車に乗り込んだ。


発進させようと
ギアを持とうとした瞬間の事だった。


目の前の横断歩道で胸を抱え込んだ女性がいた。


慌ててシートベルトを外し、女性の元へとかけよった。


「大丈夫ですか?」

『…は…はィ』

息苦しそうに返事をした彼女の顔は真っ青だった。


「近くに病院があるので連れていきましょうか?」

『ぃぇ…大丈夫…』

言いかけた言葉は
語尾まで言い切ることなく彼女の力がすうっと抜けた。


「ちょっと!大丈夫?」

自動車教習所で応急措置のやり方をしっかり覚えていれば良かったと後悔しながら
彼女を抱えて車へと運んだ。


体重なんて子供と同じくらいしかないんじゃないかと思うくらい軽くて、髪や皮膚には艶もなく よく立っていられたな…と関心してしまうほど彼女は細かった。



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