逢いたい時に貴方はいない
全体を
眺めるように
見ていた私は、
のぞみが
辛そうにしていたのが
わかった。


この様子じゃぁ
きっと、お客さんに、

呑めない
と言うことを
いつもの営業スタイルのように
言ってはいなかったんだろう…

のぞみは
周りを伺っては
見えないように
グラスの中の
シャンパンを
氷で埋めては
ちびちびと
口をつけていた。


(のぞみって
本当に呑めないんだぁ)

しかも
今となっては
のぞみの客も、
このリーマンだけ。

お酒好きそうな客だし
呑めないって
言えなかったんだろうな



そう思うと
なんだか不憫で
みていられなかった。

「のぞみ、
グラスと
今あるシャンパン
全部こっちもっといで

私が
呑んじゃうからさ」

皆に
聞こえないように
私は囁いた。

「え?
いいの?
ありがとう」

遠慮なく
のぞみが回してきた
シャンパンは
残り、
飲み掛け一本と、
未開封が3本だった。

こういう場合、
最初に盛り上がる為に
シャンパンを
勢いよく
大量に注文するけど、
全部開いたら
あとは、
ゆっくり
呑むようになるのが
自然の流れ。


だから

(このシャンパンさえ
なくなれば
万事休す)

私は
何故か
酒が人一倍強いので、

そのシャンパンを
全部
飲み干してあげた。


っつうか、
私ってば
今日は
ミー子の事が
あったせいか
超、呑みたい気分

だったしね。

…でも
のぞみに対して
自然に
優しい気持ちになれたのは
自分でも
ビックリだわ…





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