逢いたい時に貴方はいない
そこには、名指しでの文句や中傷の書き込みがされていた。

名指しで、叩かれているのは売り上げをあげているキャストばかりだった。
勿論、私への書き込みは一頁に必ず一つは入るくらい、たくさん叩かれていた。

その中に
『誰の子かわからない妊娠をして店をやめると本人が仲の良い子に話をしていたのを聞いた』と、書かれていた。

掲示板というのは、一つのネタに対して幾つもに重ねて文句を被せる習性があるらしく、
その『妊娠』のネタに対して、次から次に嘘の話がかぶさっていた。


どれも これも嘘ばかりの酷いことが書かれていた。

私は、
人の憎しみに恐怖さえ覚えた。
それと同時に、周りの誰を信じればいいのか分からなくなった。

理由は、
本当に仲の良い子にしか話していない事が話題になっていた事。
でも、掲示板は匿名になっているので
誰が書き込みしているか特定できるものでもなかった。


私は今、目の前座ってニコニコしているヘルプの子さえ信用するのが怖くなってきていた。

『ご、ごめん』
お客さんが急に謝ってきた。
さっきとは明らかに違う優しいトーンだった。
『嘘だったんだね…なのに俺、ごめん。嫌いにならないでな』

(え?なんでいきなりそんなに変わって…)
『ほら。』

お客さんはタオルを差し出してきた。


私は、その時初めて自分が泣いている事に気付いた。

あまりにショック過ぎて自分がとっている行動がわからなかった…
逆にわかったのは
私自身が、実は嫌われ者だということだった。そして、嫌われているなんて これっぽっちも思っていなかったおごっていた自分がとてつもなく恥ずかしくなった。



放心状態のまま、
時間は過ぎて、あっという間に秋山さんが来る時間になっていた。

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