逢いたい時に貴方はいない
たまたまキャストの数が足りなくて、

彼の団体テーブルには、女の子が私を含めて3人しかつかなかった。

案の定、私はテーブルがカブっていて、彼のテーブルにつくのは1時間のうち、僅か数分程度だった。


テーブルに戻ると、仕事ができない仲良し二人組がついていて スッカリ、ペロンペロンになっていた。

そして女の子の一人は彼に ペッタリくっついていた。


っつうか、何この光景。


確かに、彼の店での呑み方といえば、
お金はじゅうぶんに落としてくれるし、
女の子の嫌がる事は絶対にしないし、
楽しく呑むのが当たり前だから、キャストには人気がある。

だから、指名替えを狙って接近してくるキャストも多いのは事実だったりする。


でも、こんだけ女の武器バリバリにさらけ出してくるやり方は初めてだった。



そして、彼も、
そんなに嫌がる素振りでもなく

何事も起きていないかのように、普通にしていた。


私は、その光景を見てすぐに腹が立ち、
本当なら テーブルに戻るなり、指名してくれた彼の隣に座るのが通常だけど…

私は、彼が手を伸ばしても明らかに届かない部下の隣に腰を下ろした。


その瞬間、
彼と目が合ったのは
すぐにわかったし
私に何か言っていたかのように口が動いていたのはわかったけど、ガヤガヤした店内だから、合えて聞こえないふりをして、
私は すぐに目を反らした。


『こっち座らないんか?』

本当は聞こえていた、その声を私は無視したんだ。


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