逢いたい時に貴方はいない
次の日。

私は事実を再確認することになった。


その日も
彼は仕事を早く切り上げて私の元へ来てくれた。



『そっか〜、いたか~』
いつもの彼の言い回し。

でも
私は怖くて

怖くて…
仕方なかった。

『ど…』
「大丈夫だよ。
産まないから!」

彼の口元が動いた瞬間
それを止めるかのように

先走って、
思わず口走ってしまった。


『…だよなぁ~。』

「そうだよ、仕事だってあるし、無理でしょ。」

『だよな〜。
俺子供好きじゃないしな〜上手くいかないと思うよ』


「そうなんだぁ~私も…かな。」




そうじゃない。

私は

そんなこと
言いたかったんじゃない。

そうじゃないのに
開いた口は
止まってはくれなかった。


彼から拒絶されるのが怖くて…

重たい女に思われたくなくて…

幸せだった時間を、
ただ失いたくなくて…

私は
自ら物分かりがいいフリをしたんだ。




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