RISK~恋患い~
フツーの空気を吸えたせいか、フッと心が楽になったのか。
「お、下ろして…」
ようやく発せたのは、力なくて頼りない言葉だった。
入場した時は、捉えられてガッチリ固定され。
退場する時は、ヘンタイに抱えられるなんて。
こんな事態、誰が想像出来るって言うのよ!?
ていうか、あり得ないから…!
「ダ~メッ、離してやんない。
未月はもう俺のモノだって言っただろ?
今日から帰るトコも俺の元だし――」
ちっぽけな戯れ言なんて、コイツには通じないらしい。
「ちょっ・・・」
「ん、何か反論でもある?」
いやいや、コレは拉致に近いでしょ?
「っ、私は・・・」
出会って幾許もナイ男との、婚約なんて認めナイ…!
そう言って、ビンタをお見舞いしたいのは山々だけど。
先ほど受けた、トラウマの(落とされそうになった)お陰なのか。
果たしてヤツに尋ねられたせいなのか、自然と口を結んでしまう…。