主人公の気持ちは、彼には届いていなかったのでしょう。
同じように、作者の伝えたいことも読者に伝わってきません。
心情表現が乏しく、ただ、こうなってこうなったからこうした、という出来事の羅列だけでは、主人公がなにをどれほどどのように感じていたのか、伝わりきらないのです。
主人公は彼のことが好きでした。が、どこがどうどれだけ好きなのか。流れ出した涙だけでは、語れないし伝わない。
最初から心も描写も凍りついているように変化のない物語で、言葉だけで「好き」や「別れた」「悲しい」を言われても、伝わない。
出来事のレポートでは、伝わない。
読者には直接的言葉より、言わずとも伝わる「空気作り」が大切です。
なにがあって、どれだけ、この出来事がつらかったか、別れたことがショックだったか、なぜ涙が出るほどの想いだったか……読者が読みたいのは、そこなのです。