カワイイ娘のカ・ガ・ミ
「ねぇ、どうして地下鉄駅に大きな鏡があるか知ってる?」
純子が唐突に尋ねてきた。
私たちは地下鉄から降りて、プラットホームから自動改札口まで辿り着くための階段を中段まで上っているところだった。
振り返ると階段の下に畳一帖くらいの鏡が壁に設置されている。
いつも純子とお喋りに夢中になっていたから、いままでそんな鏡のことなんか気にもとめなかった。
「なにか理由があるの?」
身だしなみを整えるには階段を上り下りする乗客の妨げになって不便な位置にある。
「自殺防止のためなんだって」
純子が得意気に答えた。