カワイイ娘のカ・ガ・ミ
私の体が急激に冷えた。
部屋は鏡だらけで、地方の遊園地に残っているミラーハウスよりも過剰に鏡が配置されていた。
壁と天井、そして床にまで鏡が貼られ、畳くらいの大きさで特注サイズの分厚い姿見がドアから部屋の真ん中の歩くスペースを除いて大量に並べられている。
部屋の奥に窓はあるけれど、姿見が邪魔をして採光の役目を果たしていない。
「入って」私は無限に広がる仮想空間の中へ招かれた。「この部屋にはね、本当の亜里沙がいるんだよ」
向かい合った鏡の奥行きごとに、小さく映しだされている無数の自分の姿を見て亜里沙ちゃんが微笑む。
私はいろんな角度から映りこむ自分の姿を見ているだけで、平行感覚が麻痺してしまいそうになった。