カワイイ娘のカ・ガ・ミ
喜びにも満たないちょっとした幸福感を背にして階段に足をかけた途端、鏡に張っていた白い膜が見る見る消えていく。
誰もいないプラットホーム内を映さなければいけないのに、鏡には見知らぬ黒目がちの少女が横向きで鏡の端を見ている。
私の視線は鏡に釘付けになった。
『ねぇ』と言って鏡の中の少女は私と目を合わせた。
少女の表情は誇らしげで自信に満ち溢れていた。白いドレスを着て真っ赤なリボンで長い髪を後ろで束ねている。
『ねぇ、お返事してよ』
少女の声はかわいらしかったが、狭い空間に閉じ込められているからなのか声も苛立ちもこもっていた。