カワイイ娘のカ・ガ・ミ
私は娘の姿を目で捜す。
『まもなく1番ホームに〇△行きの電車が到着します。白線の内側までお下がりください』というアナウンスが私をうろたえさせる。
「あっ……」
私は愕然とした。
まるで細いロープを渡るみたいに両手を広げて点字ブロックより外側の白線の上を娘がフラフラ歩いている。
「あぶないからやめなさい!」
叫びに近い声を張り上げたが、またフードを頭にかぶり、周りとの接触を拒んでいる娘の耳には届かない。
昨日、娘はテレビで海外のサーカスを見ていた。
ひょっとすると目隠しして曲芸を披露するピエロにでもなったつもりでいるのかもしれない。