俺のココ、あいてるけど。
 
車を走らせてしばらくは、ラジオから流れる音楽を無言で聞いていたモッサ君とあたし。

モッサ君は目的地もなく道路を走ってくれたし、あたしは訳もなく過ぎる景色を眺めていた。

そのラジオの音楽が終わると、モッサ君が口を開いた。


「・・・・我慢すんなよ、長澤。何も聞かないし見ないから、泣きたかったら泣いて。それと、誕生日おめでとう」


そのときちょうど、申し合わせたように0時の時報が鳴った。

そうか、誕生日・・・・。

あたし、23歳になったみたい。


誕生日だったなんて、モッサ君に言われなきゃ気づかなかった。

23歳の初日の今日は・・・・車の外を流れる景色がぼやけた。


「フライングだったか・・・・。かっこいい真似をしようとしたけど、ちょっと俺には無理だったな」

「ううん、ありがとう・・・・」


モッサ君はかっこ悪くなんかないよ、かっこ悪いのはあたし。

どれだけ甘えれば気が済むんだっていうくらいに、あたしはモッサ君に甘えている。

でも・・・・。

こんな日に1人じゃなくて、本当によかった。
 

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