俺のココ、あいてるけど。
 
俺は適当に答えた。


「別に。少し疲れが溜まっているだけだ。だから早く帰って休みたい。それだけ」

「そうですか。ならいいんですけど、ずいぶん無理してたみたいだから。綾、心配で・・・・」


赤信号に捕まった車は、右に曲がるためにカチカチとウィンカーを出していた。

その音がやけに大きく響く。


「心配されるような筋合いはないと思うが。それはどこまでも俺の勝手だ。関係ない」

「分かってますよ、それくらい。でも───・・」


プップー!


そう言いかけたところで、後ろの車からクラクションが飛ぶ。

信号は青に変わっていたようだ。

梅村綾は急いで右にハンドルを切り、後ろの車は直進していった。


それからしばらくの間、梅村綾は何も言わなかったが、俺の部屋が近づくとまた口を開いた。


「でも、綾は登坂さんの力になりたいんです。綾のこと、嫌いかもしれませんけど・・・・」

「・・・・」


俺は何も答えなかった。というか答えられなかった。

車内の甘い匂いのせいで頭がうまく働いてくれない。
 

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