俺のココ、あいてるけど。
 
だから・・・・。


「未来とお揃いならまぁいっか。色は男向きだけど、いいデザインしてるし」

「でしょ? 高かったもん」

「バカッ!」

「へへっ」

「それより未来、手を動かしな」

「は〜い」


恵介のことはこうして笑い話にできるくらいもう吹っ切れていた。

つき合っていた日々、恵介を好きだった時間、もらった物やあげた物・・・・。

そういうものが、まるで何年も前の出来事のように感じる。

それくらい、今のあたしには恵介は“昔の人”になった。


「未来」

「ん?」


マグカップを鞄にしまうと、小百合は少し真面目な顔になった。


「働き始めたら世界も広がると思うしさ、今は無理かもしれないけどちゃんと恋しなよ?」

「小百合・・・・」

「未来は重くなんかないよ? 気持ちを受け止められない男が悪いんだって!」

「・・・・うん」

「今まではたまたまそういう男に出会ってきただけで、未来を大事にしてくれる人が必ずいるんだから。恋に臆病になっちゃダメだからね?」

「うん」
 

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