俺のココ、あいてるけど。
「ほらほら!早く!」
なかなか腰を上げない俺を梅村綾は強引に立たせ、遠くに小さく見える長澤たちを指差す。
「・・・・お前は?」
「綾はもうちょっとしたら戻りますよ。この顔じゃ泣いたってバレバレじゃないですか!」
「でも・・・・」
「もぉ!! 早くって言ったら早くなんです!」
「おわっ!ちょっと・・・・!」
ザスッ。
強い力で背中を押された俺。
靴が砂にめり込んで、前のめりに2・3歩足が出た。
・・・・振り向くと、梅村綾は慌てて俺に背中を向ける。
「本当に・・・・もうちょっとですから。綾の涙は高いんですよ? そう何度も見せられません・・・・」
両手の拳をきつく握って、それをわずかに震わせながら精一杯の強がりを言った。
そして、ふぅーと深く息を吐くと意を決したように───・・。
「すっごい好きでしたよ」
梅村綾を残して1人で戻る途中、俺は何度も礼を言った。
「ありがとう・・・・」
そう、何度も。