俺のココ、あいてるけど。
だけど、登坂さんの口以外からは本当のことは知り得ない。
聞く勇気もないし、あたしに知る権利なんて・・・・どこにもない。
“夢は夢でしかない”
あのときそう納得させたはずなのに、最近になってタチの悪い風邪みたいにぶり返しているんだ。
そういうときに限って、登坂さんはいつも以上に優しくて、よく話しかけてくれて・・・・。
嬉しい反面、不安にもなる。
麻紀さんにもあたしと同じように笑いかけていたの?
麻紀さんとどんな話をしたの?
どれくらい好きだったの?
登坂さんの後ろに、顔も知らない“麻紀さん”の影がちらつく。
どうにもならないことなのに、それでも否応なしに麻紀さんと比較してしまう。
「長澤、最近調子でも悪いのか? 浮かない顔して・・・・」
「・・・・そんなことないですよ」
「そうか? でも、何かあるなら言ってくれよ? 心配だから」
こんな優しさに触れただけで、どうにも泣きそうになる。
あたしにだけ向けられる優しさだったらいいのに・・・・そう願わずにはいられなかった。