俺のココ、あいてるけど。
これが俺と彼女───未来との出会いだった。
初めて会ったその日に初めて彼女の涙を見て、その涙で俺の目にも涙が込み上げた。
麻紀と本当に最後の別れをしたときでさえも全く出なかったのに、ほんの一瞬見た彼女の涙で涙腺が緩んだんだ。
何に泣いていたのかは分からないが、こうも間近で涙を見てしまったら気にならないわけがない。
そして、俺が流した涙の意味に気づかないわけはない。
・・・・そう、俺はただ単に泣きたかっただけなんだ。
もっと前に長澤のように泣くことができていたなら、きっともっと早くに楽になれていただろう。
受け入れられない・・・・受け入れたくない現実は、涙で流してしまえばいい。
いつかきっと、雪解けのように静かに流れて海にでも行き着くだろうから。
そうしたら、海に注ぐ一滴となって“思い出”に変わる・・・・。
そんな単純なことにも気づかずに頑なに意地を張っていた俺は、ただのバカだ。
「これで吹っ切れそうだな・・・・」
もう一本煙草に火をつけ、涙でにじんだ空を見上げてつぶやいた。