俺のココ、あいてるけど。
麻紀の話によると、その彼は職場の上司で俺たちより4つ年上の人だという。
仕事もできて人望もあり、麻紀の会社の女子社員の間ではちょっとした有名人らしい。
異動した部署でたまたま一緒に仕事をすることになり、慣れないうちは親身になってフォローしてくれた・・・・と。
「でもね、つき合ってみて分かったんだけど・・・・彼、会社以外では全くの別人だったの」
こぼれそうな涙を指ですくった麻紀は切ない笑顔で俺を見つめた。
そして、汗をかきはじめたコップに目を戻すと続きを話し始めた。
「つき合いはじめて2ヶ月くらい経った頃が最初かな・・・・。一緒にいるときにもよく彼はメールを打つようになったんだ」
「うん」
「“誰から?”って聞いても曖昧な答えしか返ってこなくて、おかしいな? って思い始めて」
「・・・・そう」
“おかしいな?”という麻紀が感じ取ったわずかなもの・・・・確かにそれはおかしいと思う。
男の俺にだってそう感じるんだ、人一倍敏感な麻紀がそれを見逃せるはずがない。
見逃したくてもできないんだ。