俺のココ、あいてるけど。
 
「でも、問いただすことはできなかった・・・・。おかしいと思っていても、彼はすごく優しくて」

「信じてたんだな・・・・」

「それも無条件にね」


麻紀は“バカだよね”と肩をすぼませて少し笑った。


「比べるつもりはなかったけど、誠治はいつも誠実だったから。だから“疑うこと自体がおかしいんだ”ってずっと思ってきたの」

「・・・・」


かつて愛した人から今の彼の話を聞くのは辛いものがある。

いい話ならまだいいが、こんな話では言葉すら出てこない。


麻紀は俺のことを“誠実だ”と言ってくれたが、俺はちゃんと誠実に向き合えていただろうか。

そして今も・・・・俺は長澤にきちんと向き合えているのだろうか。

今日まで何度も見てきた長澤の不安な顔が頭をふっとよぎった。


「みんな誠治みたいな人ばかりじゃないのにね・・・・。どうして私、誠治と別れちゃったんだろう」

「そんな・・・・」

「後悔してるんだ。もしもあのとき私がもっと強かったら、って。そうしたら、今も誠治の隣にいられたかもしれないのに・・・・」
 

< 315 / 483 >

この作品をシェア

pagetop