俺のココ、あいてるけど。
だけど───・・。
「待って、誠治!」
だけど、その声とともに俺の足は一瞬にして止められた。
背中に麻紀の体温と鼓動が同時に伝わってくる・・・・。
「ごめん・・・・。ちょっとだけでいいの。こうさせて・・・・」
「麻紀・・・・?」
「彼に“さよなら”って言える勇気、私にちょうだい・・・・」
背中に感じる鼓動はさらに早まり、体温がじんわりと移ってくる。
本当に一瞬のことで、何が起こったのか分からなかった。
それでも確かなことは、俺は麻紀の細い腕に抱きしめられていた、それだけだった。
「会って話を聞いてもらうだけでよかったの。でも会ったら誠治はあの頃のままで・・・・。私、私・・・・ごめん、誠治」
「・・・・」
麻紀の声は涙声だった。
頭では“離してくれ”と言わなければならないのは分かっていた。
俺には好きな人が───長澤がいて、彼女が傷つくところなんてこれっぽっちも見たくないんだ。
でも・・・・。
俺は麻紀を抱きしめてしまった。