俺のココ、あいてるけど。
 
「えっ?」


とっさに出たのはそんな台詞。

口から半分出かかっていた“悪いから・・・・”は、モッサ君の「登坂さん」にたちまちかき消された。


とたん、心臓がバクバクと嫌な音を立てはじめる。

誤解されちゃう・・・・。

あたしの心臓は、その自惚れのせいでそこら中に聞こえるんじゃないかと思うほどの早鐘を打ちはじめた。


何が“誤解”なんだろう。

本当、自惚れもいいとこ。

でも・・・・。

モッサ君の視線の先をたどって登坂さんの姿を探してしまう自分が確かにそこにいた。


・・・・それが間違いだったのかもしれない。

ううん、間違いだった。


「長澤、見るな!」


そう言われたときにはもう遅かった。あたしの目は登坂さんを捕えて離さなかった。

そして、その声とともにモッサ君の手の平があたしの目の前を暗く覆う寸前・・・・。

見てしまったんだ。










女の人に後ろから抱きしめられる格好だった登坂さんが、向き直って抱きしめ返す。

そんなシーンを・・・・。
 

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